しーくれっとハムのひとりごと

ROM専が時折もらす独り言です。

さいごのきす

吉原理恵子著「間の楔」は発表から30年以上を経ても、尚も読者を魅了する名作。

※年号にすると 昭和→平成→令和に至り、改めて感じる凄み。

前記事「ぞうきんがけ」はお下品な内容だったので(汗)今回は真面目で抒情的な考察を目指しました。内容的にはブログ記事「てぶくろはどこ」の補足もしくは続編です。

secretham.hatenablog.com

間の楔」で描かれたイアソンとリキの最後のキスは所謂シガー・キスでイアソン曰く”ラスト・スモーキング”です。でも「間の楔」が連載された雑誌「小説June」に気になる挿絵があります。イアソンとリキが互いに抱擁し情熱的なキスを交わすイラストです。この挿絵を見て私は実はこれが崩れゆくダナ・バーンで二人が交わした本当の最後のキスだったのかな?と思いました。リキはブラック・ムーンの効果で朦朧とする中で力を振り絞りイアソンに抱きつき、イアソンもそれに応じたのではないかと。これまで肉体で深く繋がってきた二人の最後が敢えてシガー・キスなのも尊いですが、やはり二人らしく最後まで身体で触れ合ったのかな?と。

そう考えてイラストを感慨深く見直していると、ある事実に気づきました。イアソンが手袋を嵌めていません。爪がハッキリと描かれています。f:id:secretham:20230702190130j:image

私はブログ記事「てぶくろはどこ」で単行本版(雑誌連載の書籍化)では手袋の有無の具体的描写が無いと書きましたが、「小説June」連載版の挿絵を見ると(絡み時以外の)着衣のイアソンは常に手袋を嵌めていると思われます。少なくともイアソンとリキの出会い時、リキの手首を掴む場面では手袋の存在を確認できます。それ以降は判別不能ですが少なくとも爪は確認できません。このイラストが文章で描かれなかった行間の先を描いたならば、イアソンは最後の抱擁&キスの際に手袋を外したことになります。勿論そうも考えられますが私的には不自然です。そこで注目したのが挿絵の掲載ページです。カッツェがラウールに一連を報告し終え、自室で煙草を吸い涙を流し、ガイの意識がゆっくりと戻り始めるまでが描かれています。場面の中心はやはり涙するカッツェです。だとすれば、これは涙するカッツェの脳裏に浮かんだイアソンとリキ、但し実際には見ることはなかった(見たいと願っていた)愛し合う恋人同士の二人でしょうか。もしかするとカッツェが涙したのもこの姿が脳裏に浮かんだからかもしれません。また次のページからカッツェとガイの語らいが始まります。カッツェが”間の楔”について語る言葉に説得力を持たせているのもこのイラストかもしれません。ついでにこれが連載版の「間の楔」における最後の挿絵です。今は亡き二人を描くことで、その死や悲劇性を改めて強調する効果もあったのかもしれません。

最初に仮説を立ててから疑問点を挙げて、最初の仮説の否定して別の仮説を立てる・・・。少し分かりにくいかもしれませんが以上が私が感じたことの一連の流れです。しかもイアソンが手袋を嵌めていないことに気づいたのもブログ記事「てぶくろはどこ」を書いた後でした。・・・つくづく読み込みが足りないですね(泣)。その記事に書いた通りに雑誌連載版及び単行本版「間の楔」にイアソンの手袋についての具体的描写は見当たりません。「間の楔-異聞 ミッドナイト・イリュージョン」でイアソンの手袋は描写され、文庫本版「間の楔」で連れ込み館での場面で

"しかも。シルクのような手触りのする手袋をはめたままで。初めは、(バカにしやがってッ。スラムの雑種はバイ菌扱いかよ) 憤怒も煮えたぎり状態だったが。"

吉原理恵子著「間の楔1」(Chara文庫・徳間書店)P218より抜粋

と、憤慨するリキの心情を描くことで以降はイアソンの手袋は彼自身の心境の変化を表わす巧妙な小道具として作用します。しかし道原かつみさんのイラストは「間の楔」が初期の雑誌連載時から既にその効果を担っていたことを示すように思えます。では何故、イアソンの手袋は文章描写では描かれなかったのでしょうか?これは恐らく作者にしか分からないことです。私的にはそれに対する仮説も一応はあるのですが今は伏せておきます。ただ現実的で身も蓋もない仮説ですが。

 

<あとがき>

先ず上記は全て私の仮説もしくは個人的見解です。正確性は担保されませんので、あしからず。

前記事がお下品だったので今回は名誉挽回(笑)の為に真面目に取り組もう!と思い書きました。でも私の本音は真面目と下世話(お下品)、表現の振り幅を大きくしていきたいですね。私の分身は2匹いますから(笑)。

この分身達は「はじめてのBL展」で記念撮影しました。いい加減、これもブログにしなくては・・・"(-""-)"

一応、Twitterのスペースで少しだけグダグダと話しましたが(汗)。